次は72年のライブ発掘音源。ここでの演奏は「拡散」がポイントだと思います。
冒頭から大滝詠一のソロ曲である「それはぼくじゃないよ」でスタートしますが、この72年4月のライブはほとんど大滝詠一のソロ・ライブと言い換えてもいい。「はいからはくち」は後の「ウララカ」だし、「びんぼう」もあるし。
ここで思ったのは、何故はっぴいえんどが「ライブが下手だ」と言われてきたのか。その理由は大滝詠一が走っている点にあるような気がするんですね。恐らくはこうしてどんどんとアレンジを変えることを突っ走ってやっているはずで、それはリハーサルなしで事前のちょっとした話し合いで実行された。こうしたやり方を鈴木茂も振り返って、若干苦言を呈していました。そこでの一体感の欠如や準備不足がステージに出てしまっている。決して演奏技術は各々低くないのに、結果として演奏がバラついてしまった。
鈴木茂のバンド、スカイが再結成されて新作がリリースされることが発表されましたが、そこでも収録される「ちぎれ雲」であったり、細野晴臣が小坂忠に提供した「どろんこまつり」であったりと、貴重な音源が続々と演奏されていきますが、そうした活動の振り幅がはっぴいえんどというバンドの終末を表している、とも言えそうです。