『NON-STANDARD collection -ノンスタンダードの響き-』disc 1

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先週聴いた大滝詠一のライブが83年で、こちらは翌年84年から3年間存続した細野晴臣のノンスタンダード・レーベルのボックスとなります。

 

ワールドスタンダード鈴木惣一朗さんの最近のお仕事はどれも力作ばかりで、今回も渾身の監修となっています。ブックレットは最早書籍に近い。ご本人の巻頭の執筆は論文に近い。読み応えがあり過ぎて、アカデミックな歴史探求をしている気持ちになります。素晴らしいお仕事ですね。

 

細野晴臣のプロジェクトの始まり方はYMOの時はアルファレコード、そしてこのノンスタンダードの時はテイチクレコードとの契約から始まっています。各々象徴的なエピソードが残っていますが、当時のテイチクの社長の夢に細野さんが出てきて、といった話は比較的当時から有名でした。

 

ノンスタンダードの音源は基本的には細野さん関連しか聴いていなかったので、ご本人のソロとF.O.E、そしてエグゼクティブ・プロデューサーだったSHI-SHONENの1stくらいしかフォローできていませんでした。従って、このボックスで聴けるアーバン・ダンスや初期ピチカート・ファイヴワールドスタンダード等の音源は恥ずかしながら初めて聴くものばかり。結果、聴いた印象は「古びていない」というものでした。

 

何といってもF.O.E自体がかなり前のめりで、OTT(Over The Top=過剰)等といったつんのめったコンセプトを掲げていた黒歴史のイメージがノンスタンダードには強かったので、結構その後も避けてきた時期の音ではあったんですが、確かに鈴木惣一朗が言う通り、「この音は今だな」という感じがしています。一周回って非常に肉感的な音が魅力的に響く。そして実は静かでもある。

 

幕開けの細野晴臣の12インチ「Non- Standard Mixture」のBPMがとてもゆったりしている時点でとても洒落ているわけです。コーネリアスの近作「あなたがいるなら」でのスローなビートのように、レーベルはゆっくりと始まっていた。そしてその音楽はどんどんスピードアップして行きましたが、どこか静かな佇まいがある。これはとても今の空気に近いと思うんです。