細野晴臣のノンスタンダードレーベルのBOXセット、3枚目まで聴き進めてきました。
この3枚目で抱いた選曲に関する印象は「器楽的なもの」でした。5曲目の越美晴「リップ・シュッツ」からワールドスタンダード「音楽列車」、SHI-SHONEN「彼と仔犬とわたし」に連なる流れに顕著でしたが、端的に楽器の鳴りと楽曲のインストとしての説得力があるなあ、心地いいなあ、と感じた。
監修にあたって鈴木惣一朗さんは、シャッフルで聴かれてしまう今の世の中を鑑みて過剰な曲順のこだわりはあえて反映させなかったそうですが、それでもここで伝わってくる感じは風景的なものです。曲順、というより選曲なのかもしれませんが、「今聴いていいもの」に加えて器楽感が出ているような感じもしますね。「イノセントなレーベルだったことを伝えたい」という意思が伝わってきてとても好感が持てます。
細野晴臣の『S-F-X』のアウトテイク「あくまのはつめい」が収録されていますが、こちらは「ボディー・スナッチャーズ」の原型でした。しかし装飾を廃した、リズムを中心に据えた楽曲としてとても楽しめます。発表当時に感じたリズムの「速さ」「複雑さ」は今となっては端正に聴こえる。これが35年という年月なのでしょう。
ラストに配された御大ジェームス・ブラウンをゲストに迎えたF.O.Eによる「SEX MACHINE」のカバーは発表当時から違和感がありました。やはりJBを博物館の中に閉じ込めてしまったような感じがして、本来持っているグルーヴを削いでしまっているのではないか、と直感的に思ってしまった。解釈が高級過ぎるような気もしたんですね。
でも、これは86年の録音ですから、既にジェームス・ブラウンはアフリカ・バンバータと84年に『Unity』を作っていて、ヒップホップと共演している。それ以降、徐々に復活してきていた時期ですので、デジタルな音にも親和性が芽生えてきていたはずです。ですから一概に人力ファンクのビートを機械の音に置き換えたアプローチが悪いわけではない。実際、ここでのグルーヴも充分刺激的です。ただ、JBを密室に閉じ込めるのは少し早過ぎた。きっとそういうことなんだと思います。