山下達郎『Ray Of Hope』


30年近く時が飛んでこちらは2011年にリリースされた作品。震災後に発表されたということもあり、収録曲の「希望という名の光」が本作の象徴となっています。

 

個人的には山下達郎のベスト盤『Opus』が発売されて聴き進めていた時に父親が亡くなったこともあり、この「希望という名の光」という曲はその頃の辛い気持ちを癒す曲として記憶されてしまっているんですが、元々は震災を受けて作られた楽曲ではなくその前にあったもの。それが震災後に別の意味を持ち始めた。偶然とはいえ、楽曲というものはきっとそんなもので、個人の記憶に留める理由は様々でいい。ただそこに寄り添う普遍性がこの曲にはあった、ということでしょう。

 

当時の時代の気分は楽曲の歌詞内容が重視されたり、尖ったものが回避されたり、というものだったことから全体的にはこうした聴かせる楽曲が置かれている作品になっていますが、端的に良い曲が多いのであまりメッセージ性のような胡散臭いものは感じられません。普通に音楽、音楽。音楽が全ての力を持つわけではないけれど、寄り添うことはできる。そして時間が解決する問題と、時間によって風化されないものが残っていく。山下達郎の音楽はそうしたものになっているような気がします。