石野卓球『WIRE TRAX 1999-2012』disc 1


石野卓球が主催していたイベントWIREのために提供していた楽曲を集めて年代順に収録した作品。四つ打ちへの欲求から配信で聴いていましたがCDで聴くとまた印象が異なりました。

 

比較的ポップな感触を抱いていたんですが、きちんとした音で聴くと結構ダークでビートも強い。耳に迫ってくる感覚があります。

 

時期的には3rdの『throbbing disco cat』が99年、『CRUSE』が2010年ですのでおおよそその間の楽曲ということになりますが、明らかに変化しているのはBPMで曲の速さが段々とスローになってきている。加えてご本人も解説で触れている通り、04年あたりから楽しげな音が出てきて肩の力が抜けてくるような感じがあります。

 

2010年の『CRUSE』以降はシンプルな機材で最低限の音で構成された派手さのない楽曲制作が顕著になってきますので、その傾向に沿った変化ともいえそうです。殊更に煽らない、でもビートは刻んでいく。音の強さは失われていない。時代の変化で変わったというよりご本人の嗜好が変わっただけかもしれなくて、裏返せば一貫性もある。通して聴くと左程印象が変わらないように感じます。