大貫妙子『Taeko Onuki Concert 2022』


昨年2022年12月に人見記念講堂で行われた大貫妙子のコンサートの音源が配信リリースされました。非常にいい!加えてここでは2つの大きなポイントがあります。

 

1つ目はプロモーションのあり方。今回の配信リリースは様々な媒体でのニュースで知りましたが、配信音源のリリースを手広く行うことで今年8月に行われるライブチケットの販売開始をアピールしている。

 

コロナ前のことで忘れていましたが、もう既にパッケージメディアの売上でビジネスをするよりもライブで収益を稼ぐという手法がメインであり、今回も音源は配信、プロモーションの対象はライブチケットの販売、というサイクルで回っています。そのためのプレスリリースだということ。当たり前かもしれませんが、あらためて驚いてしまいました。

 

2つ目は過去のマルチテープからの音源を利用してライブを行っているということです。現在の技術では再現できない録音当時の音を掘り起こしてライブで使う、というやり方は今後のライブの在り方として選択肢の一つになっていくように思います。

 

端的にミュージシャンが亡くなってしまったりして不在の際にも「あの音を」という手法で過去の音源とセッションすることが可能になる。この辺りもアルバム再現ライブなどで行われている手法かもしれませんが、サンプリングとはまた違った興味深い演出が可能になるのではないか、と感じました。非常に面白い。

 

そんなことよりも音楽自体の方ですが「都会」も「色彩都市」も「ベジタブル」も演奏してくれていて、おまけに「Summer Connection」までやってくれるというサービス精神。昨今のシティポップブームにきちんと現役で回答を返すなんて何てかっこいいことか。そしてやはり音作りが温かくて、かつ単純なノスタルジーではない表現を達成しています。これは実際に聴いていた方は堪らなかったんじゃないでしょうか。