フィッシュマンズ『98.12.28 男達の別れ』disc 2

2枚目は3曲しか入っていないんですが、やはりラストの40分を超える「Long Season」に耳を奪われます。

 

フィッシュマンズには2つの側面があると思っています。ひとつは快楽性の高いグルーヴに身を委ねる動物的な側面、もうひとつは歌詞内容を含めて90年代のどうしようもない虚無感を表現している文学的な側面。ただ、「Long Season」のような大作を前にすると、これはもう理屈では理解できない。グルーヴに身を委ねる気持ち良さがないとついていけないんじゃないでしょうか。

 

40分を超える楽曲が左程冗長にならないのは、ビートが刻まれている割合が高いからではないかと思います。全体の構成の中では彼岸に連れていかれるような恍惚感のある瞬間も訪れるんですが、しばらくするとまたビートが復活して俗世に戻ってくる。そこがないと恐怖の方が先に立ってしまうのではないかと思います。フィッシュマンズはそうならない。

 

表現のあり方は恐ろしいですが、実際に聴いてみるととても耳馴染みが良くて、フットワークが軽くて気持ちが良い。かつ深淵である、という不思議な音楽です。見事なバンドだと思います。