細野晴臣『SAYONARA AMERICA』


2021年に公開された細野晴臣の映画がパッケージ化されてリリースされました。公開当時も観に行きましたが、とても良かった。

 

2019年のアメリカ公演をベースにした内容ですが、基本的に音楽を主体として作られているので、映画というよりもライブを観覧するような感覚で楽しめます。各楽曲の演奏もきっちり収録されていますので、まずはそこがいい。

 

それに加えて、ニューヨークやLAの観客の反応がやはり面白い。驚くほど細野晴臣の音楽に詳しくて、本当にアメリカ人なのか?と思う程です。『Pacific』を100万回聴いたという女性にも驚きますが、意外と『フィルハーモニー』の名前が多く挙がるところにもびっくりしました。観客の年齢層も幅広いですが、若者が多いのにも驚かされます。皆、目を輝かせてステージを観ていて、かつ表情に温かみを感じられるところがいい。

 

もうひとつ、この映画が独特のドキュメンタリー性を持つのは、間にコロナの期間が挟まっていることです。アメリカのライブ映像は2019年のものですので、コロナ前の時期にあたります。それをこの映画はコロナ期の2021年から振り返っているんですが、そこから既に2年を経過して今は2023年。現在、コロナもある意味過去のこととなりつつある状況ですので、この映画は二重に時を振り返る構造となっている。ここが非常に独特です。

 

期せずしてパンデミックを間に挟んでのドキュメンタリーになってしまった映画となりましたが、逆にそこが記録として貴重になった。でも基本は音楽に比重が置かれているのが素晴らしいと思います。