フィッシュマンズ『空中キャンプ』


いつも『空中キャンプ』を聴くときには最初から通して聴くことにしていますが、それはやはりこのアルバムが全体でひとつだからだと思います。

 

一番最初に聴いた時もそうでしたが、今聴き直してみても始まりはスッと何気なくスタートする感じがあって、「一体このアルバムの何が凄いんだろう」と拍子抜けする感覚があります。それは3曲目の「SLOW DAYS」あたりからジワジワと変わり始めて、次の「SUNNY BLUE」ではまるで深海に潜ったようになってくるカッコよさがあります。その次の「ナイトクルージング」では深海から宇宙へワープするような感覚で、これはもう油断して聴いていると大変なことになってしまう。

 

90年代の何も変わらない日常を描いた時代を象徴するアルバム、みたいな言説を吹っ飛ばしてしまうトリップ感覚が中盤に隠されていて、ここでは既に異世界が広がっています。このアルバムまでのフィッシュマンズにあったバンド感覚が一部を除いて換骨奪胎されていて、音楽がひとつの球体のようにまとまって迫ってくる、上昇していく、という感覚があります。しかもそこにグルーヴもある。

 

やはりここから徹底的に化けている。そんな作品だと思います。「すばらしくてNICE CHOICE」とかも最高。