ビル・エヴァンス『Portrait In Jazz』

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ここ最近ずっとビル・エヴァンスを聴いていて気づいたことは、結構これは複雑な音楽だな、ということです。

 

ビル・エヴァンスのピアノの音はかなり縦横無尽に動くので、例えば本作に収録されている「枯葉」みたいな比較的有名な曲でも、原型がわからないくらいの音の動き方をする。ピアノ・トリオなので構成は一見するとシンプルに思えるんですが、実はやってることはとても複雑なんだな、ということが分かってきました。

 

本作は59年の録音。今回の固め聴きで聴いている作品のメンバーは全てベースがスコット・ラファロ、ドラムがポール・モチアンというトリオの作品なんですが、ここが絶頂期とのことなので心して聴いています。

 

どれも本当にいいんですが、冒頭に述べた複雑さに後から耳を奪われていくような音楽だな、と感じているところです。

ビル・エヴァンス『Explorations』

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ここからビル・エヴァンスの固め聴きにいきます。まずは61年録音の本作から。

 

ビル・エヴァンスは先日初めてまともに作品を聴いた後にYou Tubeでいくつかの動画を観ていましたが、どの時期の演奏も本当に良くて、早く作品を聴きたいと思っていました。感情に訴えてくる思索的な音。とても迫ってくるんですよね。シンプルなピアノトリオの音なのに何でなんだろう。単純に演奏が上手いからなのか。

 

かつて自分はドラムをやっていましたが、子供の頃はピアノも習っていて、きちんと練習せずにやめてしまったんですが、どうもピアノの演奏家に惹かれるのはその辺りにも原因があるかもしれません。

 

元気に生きられるとしても後20年近くでしょうから、早いこと楽器を演奏する日々を過ごしてみたいと思うんですが、ギターもドラムもピアノもやってみたいので焦点が絞れない。これをどうするかが楽しい悩みです。

シャーデー『Stronger Than Pride』

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とにかく冒頭の「Love Is Stronger Than Pride」、これに尽きると思います。シャーデーの88年リリースの3rdアルバムですが、ほぼこの一曲のために探していたと言っても過言ではない。

 

シャーデーが流行っていた頃というのは自分にとっては高校生から大学生の時代なのではっきり言って懐メロの意味合いが濃いんですが、そんな中でもこの冒頭の一曲はずっと記憶にあって、いつかはきちんと聴きたいと思っていた。で、今回やっとそれが叶ったんですが、聴いてみるとあっという間に流れていってしまって結構あっけない。記憶というのはそんなもんかもしれません。

 

アルバム全体については正直可もなく不可もなくといった感じなんですが、でも流していると心地良さそうな「Clean Heart」みたいな曲も並んでいるので侮ってはいけない。しかしやっぱり自分にとっては冒頭の一曲に尽きてしまうんですね。何故かというと、その透明感だと思います。「独特の」とまではいいませんが。

レッド・ガーランド『Bright and Breezy』

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2020年を振り返るにはまだ早いですが、余りにも時が経つのが早いのでそろそろ考え始めても良いかなと思ったりします。自分の聴いた音楽という意味では、今年はやっとジャズに目覚めた時期だったということができます。多くはラジオ番組のおかげですが、きっかけを与えてくれたのは、このレッド・ガーランドだったということもできるでしょう。

 

こちらは61年録音の作品ですが、この時点で既に引退直前ということで、とても活動期間の短い方だったんだなあ、と感慨深く聴いていました。その後70年代に復活するそうですが、ここでの演奏はマイルスのクインテットの時ほど緊張感もなく、かといってだらけている訳でもないので、安心して耳を傾けることができます。

 

少し和音が増えてるかな、と感じる部分もありますが、相変わらず音は転がっているので、可愛くてストイック。ジャズの扉を開いてくれたことに感謝しつつ、リラックスして聴いています。

ケニー・ドリュー『Dark Beauty』

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こちらは74年録音の作品。ケニー・ドリューを聴くのは2作目ですが、前回聴いた『アンダーカレント』もピアノを弾きまくっている印象がありました。こちらも同様ですが、とにかくクラシカルで時にバンドと共に走り抜けていくような疾走感もあって痛快です。

 

70年代の録音ということもあって音が若干洗練されている点もあるんですが、結構聴き進めていくと意外とオーガニックでスピード感もあるので成熟度が左程気にならなくなります。フュージョンとはやはり一味違う。

 

ケニー・ドリューという人は60年代に一度ブランクがあって70年代に復活した活動歴があるそうで、ここでの録音もその一部となります。50年代から連なる系譜が時を超えて繋がっていく感じですね。ハードバップ の人なので、時代が変わってもスタイルは余り変わらない。変わっていったのはマイルスだけなんですね。

ラヴィン・スプーンフル『Do You Believe In Magic』

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禁煙を始めてからまる4年経った記念の日に聴くのはラヴィン・スプーンフルの65年リリース1st。こちらはBSの番組『Song To Soul』を観て手にとった一枚です。

 

ラヴィン・スプーンフルについては表題曲が余りにも有名で、かつジョン・セバスチャンについては折に触れて細野晴臣のトリビュートに参加するなど、何度もこれまで聴く機会はあったと思うんですが、何故か手を出さずに来てしまいました。特段聴かなくても大勢に影響はないと考えていたのかもしれません。

 

実際にアルバムを聴いてみてもまずは冒頭の表題曲に全てが凝縮されているような気がして、その突出具合が象徴的です。ただ、「Did You Ever Have To Make Up Your Mind?」なんかを聴いていると何となくキンクス的な雰囲気も漂わせていて侮れないし、そもそもジョン・セバスチャンの参照先であるジャグバンドの音というのは気になる雰囲気だったりします。細野晴臣のトリビュートも素晴らしい出来でした。それもあって、ジョン・セバスチャンの1stは「いつか聴かねば」と思っていた。

 

ここから更に作品を聴き進めていくかどうかは微妙なところですが、いわゆるマスターピースのような感じもするので、マンフレッドマンキンクスなんかと一緒にゆっくりと気にしていこうかな、と考えているところです。

ソニー・ロリンズ『Newk's Time』

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57年録音のこちらもハーモニカミッドナイトで紹介された作品。冒頭からマイルスの「Tune Up」で始まるのが嬉しいですね。この曲は自分がマイルスを初めて聴いた『Cookin'』に入っていた曲で、当時を思い出しながら聴くことができました。

 

そもそも本作のドラムはフィリー・ジョー・ジョーンズで、「Blues For Philly Joe」といった楽曲もあるし、フィリー・ジョーと二人で演奏した楽曲も収録されています。ドラム・ソロもたくさん入っていて、まるでフィリー・ジョーに捧げたかのような作品になっています。聴いていて躍動感があってとても嬉しい。

 

やはり自分の場合はマイルスの50年代後半、キング・クリムゾンの80年代、と時代のある時期を起点に聴く範囲を広げていくので、こうした人物や楽曲の関連性が聴く中で出てくるととても嬉しくなってくるんですね。こんな感じで音楽は聴き進めていくもんだと思っています。