あがた森魚『タルホロジー』

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21世紀に入ってからのあがた森魚は傑作しか作っていないそうなので、07年リリースの最新作から手に取ることにした。久保田麻琴プロデュースによる稲垣足穂からその名を冠した意欲作。

1曲目から鈴木慶一細野晴臣が交互にボーカルをとる『東京節』で始まる。「パイのパイのパ~イ」と歌われる良く知られた曲だがいきなりいい。2曲目は何とヴァージンVSのセルフカバーだ。それにしても久保田麻琴はこうした微妙なプロデュースがうまい人だ。あがた森魚は『永遠の遠国』と『日本少年』の印象が強くて他に手が伸びずにいたが、確かに21世紀のあがた森魚はいいかもしれない。必要以上にウェットにならずに非常に洒脱な印象を残す。トランペットやバイオリンで武川雅寛は大活躍。『いとこ同志』はムーンライダーズとは別の曲。『骨』は鈴木慶一の曲だ。

『Taruphology』『雪ケ谷日記』『弥勒』の3曲は稲垣足穂組曲だが、稲垣足穂といえばムーンライダーズの語源となった詩を含む『一千一秒物語』。しかしこれしか読んだことはない。『雪ケ谷日記』は朗読だが、『スターカッスルの星の夜の爆発』みたいなセンチメンタルな音ではなく、あくまで乾いているのがいい。

『午後4時のアメジスト』はイントロからしてカッコいい。ああ、これは名曲かも。後半にひらめく曲が登場するのは『永遠の遠国の歌』での『淋しいエスキモウの様に』以来だ。ギターがいいと思ったら徳武弘文だった。細野晴臣のワールド・シャイネスでもいい仕事をしてましたよね。

大作なので理解するまでには10年くらいかかりそうだが、とりあえず21世紀のあがた森魚は注目することにしよう。ムーンライダーズ30周年の『大寒町』は確かに良かったしね。