ずっと後回しにしていた高野寛の新作。本人曰く「捨て曲なし」ということだったが、これは充実作。いいですね。
まずオープニングがいい。1曲目の『Hummingbird』が2曲目『LOV』の誘導になっていて、いつのまにか始まっている仕掛け。まるでXTCの『スカイラーキング』のオープニングみたいだ。先行シングル曲の『Grass』が切れ目なしで2曲目に収まっている瞬間を聴いた時は鳥肌が立ったものだが、同じような感動がある。思えばトッド・ラングレンの技だった訳だが、流石はトッド・フリーク。技を仕込みますね。
pupaでの好調ぶりやYMO周辺のサポートといったここ最近の充実した活動から期待してはいたが、思った以上に飛ばしている。『初恋プリズム』なんかもいいですね。『Timeless』なんかも含めて全盛期のピチカート・ファイヴのよう。全体的にアコースティックなのもいい。高橋幸宏や細野晴臣、忌野清志郎、原田郁子、コトリンゴとゲストも多彩。活動の幅が自然な形で凝縮されている感がある。
『小さなYES』もいいですね。『夢の中で会えるでしょう』路線のメロウな高野節で、王道だ。この辺の高揚感がこの人の真骨頂だろう。『Black & White』を聴いた時の「お、久々にいいじゃん」と感じた登り詰めていく感じはアルバム全編に緊張感を持って漂っている。
『明日の空』『あけぼの』なんかもいい曲。『虹の都へ』の再録が入っているが、リリース当初よりサビの部分が浮いていなくて自然に収まっている。もう少し落ち着かせたアレンジかと思っていたが、勢いは持続したままで不自然さを取り払ったいいバージョンに仕上がっている。
傑作ですね。