先日一気に聴いたロバート・ワイアットのこちらはシングル集。20分弱の収録時間のCD5枚組で、70年代、80年代、90年代の音が入っている。
70年代はモンキーズのカバー『I'm A Believer』で幕を開け、80年代は名刺代わりの代表曲『Shipbuilding』だ。こちらはエルヴィス・コステロのペンによるもの。ピーター・ガブリエルのカバー『Biko』なんてのもある。
ロバート・ワイアットはシングル曲をアルバムに入れてくれないので、こうしたBOXものがあると非常に助かるんだけど、それにしても80年代の音は暗い。『Shipbuilding』は例外としても、『Biko』周辺の音やサントラの『The Animal's Film』等はちょっと・・。
90年代の音は『シュリープ』のリミックスで、比較的軽やかに聴ける。それにしても日本ではあんなに派手だった80年代がロバート・ワイアットにとってはこんなに暗いものだったとは。『Shipbuilding』はフォークランド紛争を歌ったものだし、当時は共産主義に傾倒していた時期。冷戦終了、ソ連崩壊後はアメリカの糾弾にまわっているようだが、ヨーロッパではこんなに暗い側面が語られていたのかと思うと背筋が凍るようだ。
そこから一歩踏み出た90年代の音が解放に向かっているのはある意味皮肉も込められているかもしれないがいいことだし、声高に叫ぶのではなく静かに訴えていく姿勢は毅然として美しい。何よりもこの美しさがロバート・ワイアットの真骨頂なんじゃないかという気がする。
いずれにしろ、シングル曲が沢山聴けて楽しい作品。(4枚目はさすがに途中でリタイアしました。)