スライ&ザ・ファミリー・ストーン『Stand!』

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なるほど。ここに来て爆発するんですね。69年リリースの4th。これでもまだ食い足りない感じがあるのはやはり音の古さだろう。何か変に荘厳なんですよね。

『Sing A Simple Song』が一番好き。『Stand!』での転調も確かにカッコいい。『I Want to Take You Higher』は思った以上にブリブリしていて呪術的。ワンコードで押し切るところと、リレーボーカルのスリル。なるほどプリンスの『1999』はこの辺から来てるんだな。この曲がウッドストックで強烈なインパクトを観衆に与えて、スライは半ば伝説化していってしまう訳だ。

 

真骨頂はこの後のシングル3連発にあって、69年に頂点を極めた後に急速にクールダウンしていく。よく言われるように当時はこうしてスターダムに登り詰めたアーティストには悪い取り巻きがまとわりつき始め、ドラッグに溺れて精神に破綻を来していく。実際、普通ではない環境でクリエイティブな作品を作り続けることはプレッシャーと自己への問いかけの繰り返しで疲弊していってしまう。そういう意味では人間的で微笑ましい訳だが、やっぱり時代を感じるなあ。そこに人生を捧げてしまうんだから、流れというものは恐ろしい。この「周囲」という奴がくせ者で、目立つと祭り上げられ、無言で追い込んでいく恐ろしさがある。フロントマンというのは本当に悲しい。得るものもあれば失うものも大きい。一体何が幸せなのかなんて分かりませんよね。

と通り一遍の意見を述べた上でこの作品を見ていくと、13分に及ぶインストの『Sex Machine』に目がいってしまう。何でこんな作品を収録したのか。思うにこのアルバムはスライのこれまでの集大成であり、こうした曲もまたその一部。あるいはヒット・シングルに囲まれたアルバムに唯一意地を見せた曲なんじゃないかな。ファンカデリックみたいにドロドロじゃないし、スッと聴けるものではあるが、バランス的におかしい。そこがまた微笑ましい感じもある。

スライのアルバムは全体的に音が小さいが、音圧を上げるだけでも印象は随分違うんじゃないだろうか。それからエコー処理で失ってるものは非常に多いように感じる。かつ『Everyday People』に見られるようなポップス然とした作りの曲に、ファンクを期待する耳が肩すかしを食らう、というのがこれまで自分の中に入ってこなかった原因なんじゃないかと思う。巷で言われるよりもスライは複雑なアーティストだ。