クラフトワーク『ツール・ド・フランス』

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オリジナル・アルバムとしては17年ぶりにリリースされたという03年作のこのタイトルは、83年にシングルで出た『ツール・ド・フランス』の拡張盤というイメージが強くて当時手を出さないでいた。実際、先行でリリースされたシングルでの音の変わり様にがっかりしたのを覚えている。でもその後『Minimum Maximum』が出て、しばらく前に掃除しながら聴いていたら『Vitamin』という曲がやけに気になった。これは結構いい曲だ。

 

実は後半に収録された新曲の方に本質があって、意外とポップな曲が並んでいて楽しい。『Aero Dynamik』も『Electro Kardiogramm』も好きですよ。00年に出た電気グルーヴのシングルに『Nothing Gonna Change』という名曲があったが、そこでも感じた音の温かさ。単なる電子音ではなく音色が柔らかくなって刻まれるという世界観を一貫して展開できているという意味で、また定番の旋律を繰り返す妙なノスタルジーという意味において、この作品は実は貴重だ。安心して聴けるブランドみたいな趣。懐古趣味かもしれないが、実際ライブでも盛り上がっているようだったし、生ける伝説として皆認めているんだろうと思う。テクノポップというのは最早そういうもんだ。

オリジナルの83年盤は随分後になって12インチシングルを探して買い直した程好きだった。

 

ファンキーですよね。最近自転車も流行ってるからその先駆けだった?偶然かな。でも肉体と技術の融合という形式ではミニマムなシステムであるという意味で、エコロジカルであることも含めて時代的であるとも言える。自動車、特急電車等、移動体としてのメディアをテーマに扱ってきたクラフトワークがこうしたある意味フィジカルなものを取り上げるのは非常に面白いと当時思ったものだ。単にラルフの趣味かもしれないが・・。