72年リリースの5作目。前作『Blue』と次作『Court And Spark』の間に挟まれて地味な印象があるが、とてもいいアルバムだ。『Cold Blue Steel And Sweet Fire』『Electricity』『Woman of Heart And Mind』等、引っかかる曲が多い。
ジョニ・ミッチェルの場合、旋律が複雑で、思いっきり歌詞が詰め込まれているのを歌うように呟くように曲にしていくので捉えどころがない印象があるが、それをジャズやフュージョンの手法と混ぜて昇華させてしまうのが次作以降の絶頂期となる。チャールズ・ミンガスと一緒にアルバムを作ってしまうのだから凄い人だ。『ミンガス』を最初に聴いた時の緊張感は今でも忘れない。
このアルバムの曲のどれかがFMでかかって、「ああ、チェックしなきゃ」と思ったのが随分と前なので、どの曲かが聴いていても思い出せないが、先の2枚の名作の間にあるんだから悪い訳がない。『Blue』の私的な感触に比べるとスケールが広がった気がするのはゲスト・プレーヤーの多彩さからか。それは次作以降爆発する訳だが、その予兆は充分に出ているような気がする。
いいですね、これも。