1作遡って88年の作品。ここではまだ打ち込み色が強い音になっています。
ゲストが多彩で冒頭のピーター・ガブリエルとのデュエットからドン・ヘンリー、ウィリー・ネルソン、ウェイン・ショーター、果てはビリー・アイドルまで登場するという何でもありの豪華盤。その割には佇まいは静かですべてジョニ・ミッチェルの音世界の中に塗り込められているような印象を受けます。80年代後期はこうした構築型の音が流行りだったんですね。
声に着目して色々な形で自分の声や他人の声を楽曲のパーツとして配置していく。その絡み方も複雑で一見難しそうにも聴こえますが、不思議と統一感がある。今回改めて思ったのはジョニ・ミッチェルという人はギターのストロークだけではないということです。以前ゲフィン時代に触手が伸びなかったのはジョニ・ミッチェル=変則チューニングのギターストロークという固定観念があったからで、アコギの入らない曲はジョニ・ミッチェルではないと勝手に決め付けていたからでした。実はそんなことはなく、楽器がどうあれジョニはジョニ。表現される世界観は統一されているんですね。
後期の作品に顕著なこうした包み込むような音世界は本作では打ち込みと声で展開されています。それが次作で若干揺り戻しがあるに過ぎない。でも本質は変わらないんですね。後はその質感を気に入るかどうかだけの話です。で、本作はどうかというとやっぱりちょっと薄いような気がしました。だからこそ次作の原点回帰があるということですね。