コーネリアス『ファンタズマ』

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97年リリースの3rdアルバムが、砂原良徳のリマスターで再発された。ある意味必然の二人の組み合わせに期待を膨らませて聴きました。

「何故、今?」の問いには「『2010』という曲が入っているから」というような回答。二人の対談が雑誌に掲載されているが、その中で「2010年はもっと変わっているかと当時は考えてた」とあって、「2020年もきっとそんなに変わらないだろう」とコメント。確かに見た目はそんなに変わらないんだろう。ただ、少し今よりも静かになっているんじゃないだろうか。

このアルバムの印象は「音が沢山あって、今の時代にはちょっと・・」というものだったが、そのあたりはグッと整理された印象を持った。「超低域を整理した」そうだが、そのために聴こえてくる音が増えた。聴いていて結構きつかったのが、大分楽になった。砂原曰く「10年後も聴ける」音にしたそうだ。

97年には電気グルーヴも『A』を出していて、ある意味混沌が出切った年だったんだと思う。その後、コーネリアスは『Point』で音を引き算していく訳で、静かなゼロ年代を導いていった。お腹一杯の時代が終わったように感じたし、語られていたので、このタイミングでの『ファンタズマ』リマスターにどういう意味があるのか、と考えていた。でもきっとそんなに意味なんてないんだろうな。ただ、過剰なものは整理された、ということだ。

Disc 2が楽しい。基本的に初めて聴く音源ばかりだが、当時の未発表曲や他アーティストによるミックス、そしてライヴ・バージョン等の関連音源が集められている。

『Typewrite Lesson』はニヤリとさせられた。スネークマン・ショーみたいだなあ。アルファベット3文字を次々唱えていく形式で、KDDからSDPから果てはTRFまで。YMOもあったかな。小室ファミリーには笑った。前身バンドのマイクロ・ディズニーから曲名を拝借した本家ハイラマズによるミックス『The Micro Disneycal World Tour』は、まんまハイラマズだし、小西康陽のミックス『Count 5,6,7,8』はほとんどピチカート・ファイヴだ。このあたりの音源を丁寧にパッケージしてくれるのは、とても嬉しい。

Disc 3はDVDだ。当時の武道館ライヴの映像が収録されているが、昨今の『SENSUOUS』関連での完成され尽くした演出美の萌芽を見るようで、とても興味深い。ここら辺から始まったんだな。後半は海外公演での映像や『Star Fruits Surf Rider』のPV等。この辺りはスペースシャワーで何度か見た映像かな。ここら辺の凝り方も、その後のDVD作品の快進撃の出発点にある。

 

ということで、聴きごたえ、見ごたえがありました。