The SUZUKI『Everybody's in Working Class』

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97年リリースの鈴木慶一・博文兄弟の覆面ユニット。覆面といってもThe SUZUKIなので覆面でも何でもないが・・。

The SUZUKIはシングルで何枚か持っていたが、フルアルバムは何となく手を出さずにいた。今回正月のセールで激安だったので大貫妙子と一緒に購入。もっと早く聴いとけば良かったかな。湾岸の労働者みたいなジャケットには風格すら漂う。もうリリースは10年以上前になるのか・・。時期的にはライダーズ20周年の直後で、名作『Bizarre Music For You』の後、『月面讃歌』の前。ということは絶好調だ。まあ最近も絶好調なんですけど・・。

『Tracker』のギターがいいなと思ったら徳武弘文だった。最近いいと感じるのは何故かこの人ばっかりだな。ということはカントリーが好きになったんだろう、自分が。時折挟まるライブがいいが、全部カバー曲で鈴木慶一が日本語詞をつけたもの。アニマルズ、キンクス、クレイジー・ホースと来る。この間のムーンライダーズの10時間でもザ・バンドの曲に日本語詞をつけて演奏していたが、基本的にとてもいい雰囲気だ。ライダーズとザ・バンドだとはちみつぱいみたいに聴こえてしまうが。

ソロでもライダーズでもないこうしたユニットでの活動はスタンスが難しそうだが、どうやってバランスをとるんだろう。ライダーズという第7人格を意識しないでかつ好きなことをやる、ということか。ビートニクスともまた違う羽田の東京臭さが出ていて、きっと狙いはその辺なんだろうと思わせる。ビジュアルが何といってもそうだからな。

今回一番楽しみにしていたのが先日聴いたキンクスの『Victoria』のカバー。花のお江戸の廻船問屋の物語に置き換えてしまうあたりにくい。中盤の「酒もってこいや、金ならあるぞ」っていうのは笑える。『高架線上の魔人達』がベストトラックかな。「釘のような男」「ネジのような女」という詞は『工場と微笑』に直結する鈴木博文ワールドだ。鈴木慶一作品では『Romeo, Juliet & Frankenstein 2』が一番いい。