ムーヴ『Message From The Country』

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ムーヴとウィザード、そしてELOはビートルズの正当な継承者だと思う。活動は半歩遅れだが、見事なまでの再解釈を行い、強烈なポップスに仕上げたロイ・ウッドとジェフ・リンの手腕はもっと讃えられていいだろう。

ムーヴは4作のアルバムを残しているが、ラストの本作だけは何故か未聴だった。なんだかんだとベスト盤が出ていたりするので今回聴いて初めて聴く曲は左程なかったが、それでも71年にリリースされて直後にELOの1stへと発展して、その後ロイ・ウッドはウィザードへと分派してかつ怒濤のソロ名作群をリリース、ジェフ・リンはELOをしぶとく継続してアメリカで大成功を納めるといった70年代の歴史を作っていく二人のクリエイターが同居していた奇跡のバンド、そいつがムーヴだ。

今回手にしたのは05年に出たリマスター盤で当時のシングルがボーナストラックとして収録されているが、残念ながらこのシングル曲の方が力が抜けていて名曲揃いだ。本編の方はELOの1stにも繋がる混沌とした重い世界観が提示されていてオープニングからびっくりするのでちょっと初心者向けではない。そのタイトル曲なんぞは一瞬CDプレーヤーが壊れたのかと思った程遠くの方からコーラスが聴こえてくる。それでも全般的にはこの時期ならではのジェフ・リンとロイ・ウッドの作風がくっきりと現れていて、やはり二人の巨人の同居は難しかったんだろうと思わせる。そういう意味ではYMO細野晴臣坂本龍一に似ていて、恐らくは間に入ったべヴ・ベヴァンは高橋幸宏のように大変だったんだろうな。

シングル曲では『Chinatown』が最高だと思うがなかったので『Tonight』の方を貼っておく。因に『Do Ya』はその後トッド・ラングレンがUTOPIAのライブ盤でカバーを収録した。これはムーヴの方がコンサートでナッズの曲を取り上げたことに対する返答だったが、確か『Open My Eyes』だったかな。