鈴木慶一『THE LOST SUZUKI TAPES Vol.2』

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完全にデモ集。Vol.1が非常に良かったのでこちらも期待していたが、これは一緒に家にいてデモを聴かせてもらっているようなこじんまりとした感覚が強い。『君はガンなのだ』のような必殺の未発表曲を期待したが、これはそういう趣旨のものではないようだ。

そもそもこうした企画は誰が提案するのだろう。ジョン・レノンから始まってアンディ・パートリッジのVol.8まである大作シリーズも過去にはあったが、音の悪さも含めてファンじゃないとなかなかついていけないのでは?と思っていたらそこそこ完成形手前らしき音源(『All That I Needed(was you)』)が登場してきた。本人はあまり覚えていないようだが・・。後半は結構曲になっている音源が比較的多い。

ライナーには本人のインタビューによる楽曲解説があって楽しい。完成品がほとんど原型をとどめていないものも多くて、「何でこれがああなったんだろう」と思わせる曲もかなりある。そういう意味では深堀も可能だが皆そこまで暇じゃないよなあ。なんて言うと怒られそうだが・・。80年代から90年代の音源をほぼ年代順に並べたということは続編も期待できそうだ。

ラストにお宝。鈴木さえ子の『アメリカのELECTRICITY CO.』のデモが出てくるが、本当に美しい曲。デモではピアノの高い音が響いて音も悪く、さながらブライアン・ウィルソンの再録集に入っている『Still I Dreams of It』のようだが、これはまたオリジナルを聴きたくなった。鈴木さえ子のアルバムにおける鈴木慶一のキラキラした感じは何ものにも代え難い鮮烈さがある。いいねえ。