80年リリースのヨーロッパ三部作二作目。この人も亡くなってしまったんだよなあ。
加藤和彦に何となく手が伸びなかったのはやはりその「歌謡性」にあった訳だが、名盤と言われるこの作品からもその印象は拭えなかった。YMO関連のゲストの豪華さに惹かれて気になって仕方がなかったが実際はテクノ歌謡をベースにしたタンゴ風味の曲群であり、ボーカルのクセも含めて好き嫌いが分かれる人ではある。一時期のあがた森魚のような印象を受けた。
装飾の割に音は薄く、時代の空気を感じさせる以外は特に目新しい要素はない。ベルリン録音という特殊な環境で作られた冷ややかな感触がクールかというと左程でもなくて、少し甘い感じがする。シリアスさが足りないんだな。きっと景気がよかったんだろう。フェイクな感じがどうしてもしてしまうんですよ。ある意味ムーンライダーズや一風堂のニューウェーブ初期みたいなプラスティックな手作り感覚を覚える。少し気恥ずかしいんですね。
ジャケットの構成主義がクールな他は見るべきものはなさそう。ちょっといいなと思ったのは『ケスラー博士の忙しい週末』くらいか。ここははねてていい。うん、後半は少しいいね。聴き込めば染みてくるかな。それとも自分には向かないか。少し寝かせる必要がありそうだ。