キャプテン・ビーフハート『Trout Mask Replica』

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キャプテン・ビーフハートはポップだと思います。このアルバムは冒頭から強烈でとてもそうは思えないかもしれませんが効いて来るんです。声がウルフマン・ジャックみたいなダミ声ですから最初はとっつきにくいかもしれませんが、よく聴いていくと実はバックの演奏は構築されていてリズムの変化も刺激に富んでいる。何よりギターのリフ、というよりパーツ化されたフレーズの連続が覚醒作用をもたらすんですね。

『Ella Guru』はXTCも完コピしていましたし、小沢健二も90年代に聴きながら友人と大騒ぎしていたという話もあります。要するにキャプテン・ビーフハートの音楽はそうしたポップ・アーティストとの共通点があるんですね。次作はより混沌度合が増しますが、本作はザッパのプロデュースということもあって全体の構成がとても変化に富んだものに仕上げられています。

一度はまったら最後、抜け出せないんですが、このアルバムで最も鳥肌が立つのは『Pena』という曲。カッコよ過ぎますよ、これは。一見不協和音の連続のようでいて丁寧に狂気を表現している。自動筆記に近いキャプテン・ビーフハートのアイディアをバンドメンバーがきちんと拾い上げ、合宿までして練習しまくって出来た楽曲群ですので単なるパンクではない。

『Pachuco Cadaver』『When Big John Sets Up』『Sugar 'N Spike』『Steal Softly Thru Snow』『Veteran's Day Poppy』といった曲に震えが来るようになって一人前。聴くべし聴くべし。ザッパより実はずっとシンプルで分かりやすいですよ。元はブルースですからね。でもブルースなんか知らなくても充分楽しめます。自分がそうですので。