ムーンライダーズ『moonriders FUN HOUSE YEARS』disc 3『Bizarre Music For You』


96年リリースの20周年記念アルバムで、文句なしの傑作。ほとんど捨て曲なしですが、9曲目の「オー何テユー事ナンダロウ」まではイキっぱなし。ここまでポップに突き抜けたアルバムはそうそうないと思います。まるで一本の映画を観ているようだ。

 

とにかく曲がいいので、例えば「ニットキャップマン」で糸井重里が詞を書いていたり、矢野顕子がボーカルで参加していたり、あるいは「僕は負けそうだ」で直枝政弘が参加していたり、といったことが吹き飛んでしまう勢いがあります。

 

これまでの作品への細かいオマージュもあって楽しいんですが、とにかく楽曲のクオリティで突っ走るのが痛快。何度聴いても飽きないのが素晴らしい。「ニットキャップマン」では岩井俊二が監督したPVもありましたね。岩井俊二ムーンライダーズの実物を見て「動いてる!」と感動していたそうですが、そのくらい生ける伝説となっていた。既に30年前くらいで。

 

このアルバムがあるからファンハウス期は侮れないし、今回手を伸ばした理由でもあります。キャプテン・ビーフハートのアルバムタイトルみたいな名前の「愛はただ乱調にある」や絶品ポップスの「春のナヌーク」、武川雅寛がサラリと差し出す「風のロボット」など、聴きどころは言い出したらキリがありません。ムーンライダーズの第7人格が表出した素晴らしいアルバムだと思います。