ムーンライダーズ『moonriders 45th anniversary ”THE SUPER MOON” LIVE』


2021年6月12日に行われたムーンライダーズの45周年記念ライブがパッケージでリリースされました。開催時には配信もされましたので、当時は5回くらい観てあまりに感動したので全曲解説をしてしまいましたが、今回待望のパッケージ化となります。これは本当に素晴らしいライブだった。

 

ゲストミュージシャンを迎えて倍の人数で演奏されたスーパー・ムーンライダーズの形式。この演奏力も素晴らしいんですが、やはりこのライブはムーンライダーズの「場を変える楽曲」がキーポイントだと思います。

 

ひとつは「選曲」。この辺りから選曲を外部のムーンライダーズ・マニア「GHQ」のお二人に委ねて、客観性を備えた極めて質の高い選曲がなされている。「この曲をやるのか!」という驚きに満ちた瞬間を何度も味わうことができます。その驚きで場の雰囲気がガラッと変わる。具体的には「B TO F」「夏の日のオーガズム」「Sweet Bitter Candy」「現代の晩年」などがそれに当たります。

 

もうひとつは「アレンジ力」。このメンバーだからできること、ボーカリストを次々と変えることで生まれる奥行き、このアレンジ力があってかつ演奏力が加わって初めて成立するダイナミズム。「トラべシア」でのメンバー4人によるボーカル・リレーは本当に感動的です。しかし何といっても凄いのは「春のナヌーク」で、ベース・バトルからイントロに入って「Don't Trust Anyone Over 30」が始まるかと思いきや「春のナヌーク」に移行するという二重にも三重にも仕掛けを施したアレンジ。これは観ている時には卒倒しました。

 

しかし、こうした演出を凌駕する瞬間が、最後の岡田徹の登場によって訪れます。退院直後の参加で、しかも今年には残念ながら亡くなられてしまった、という物語性。加えてご本人の「我が人生、最良の日です」というコメント。それを聞いて微笑む白井良明の表情。全てが感動的です。岡田さんは終始涙ぐんでいて、観ているこちらも涙を禁じ得ない。こんな素晴らしい復帰ステージがあるでしょうか。

 

ということで、見せ場が多い上にメモリアルなステージとなった記録を残してくれて本当にありがとうございます、と言いたくなる作品です。