デヴィッド・ボウイ『Lodger』

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ベルリン三部作のラスト。79年の作品です。

全2作と異なりポップな印象が強いとされる本作ですが、確かにB面全体がインストだったり、キーボード色が強く出ていたり、ヨーロッパ的な哀愁があったり、といった特徴的な要素が続いていた前2作のような趣はありません。ただ、一貫しているものは前2作のA面にあった要素であり、そこではやっぱりポップスがあった。「軽さ」と「曖昧さ」。これがボウイには一貫してあるように思います。

ポップといっても個別に見ていけば本作の楽曲も変わったものばかりだし、ただその佇まいがポップなだけで、前衛であろうとする意欲自体は継続しているように見受けられます。この捉えどころのなさはずっと続いている。これは今回聴いた6枚を通じてもそうだと思います。

それにしても『ヒーローズ』ではロバート・フリップ、今回の『ロジャー』ではエイドリアン・ブリューということで、その後キング・クリムゾンで合流していく面子が代わる代わる顔を出してきますが、これらはすべてブライアン・イーノが影にいるんですね。それが80年代クリムゾンとして結実する訳ですから、ベルリン三部作はその伏線にもなっていることになります。

『D.J.』での歌唱は確かにデヴィッド・バーンのようです。この辺りもイーノがトーキング・ヘッズをプロデュースしたことに端を発する訳で、80年代のニューウェーヴとも直結している。ブライアン・イーノの存在というのは実に大きい。ニューウェーヴの父じゃないですか、まるで。

次作は大好きな『スケアリー・モンスターズ』なので、その雰囲気に近い音を紡いでいる本作も違和感なく耳に入ってきました。それでも印象が曖昧な作品がやはり多いので、今後何回か聴かないとその本質は分からないような気がします。それくらいデヴィッド・ボウイというのは自分にとって不思議なアーティストでした。