朝日美穂『ひつじ雲』

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6年ぶりのフルアルバム!傑作です!

高橋健太郎の奥さんになっていた朝日美穂の新作は残念なことに本人のウェブサイトからの通販のみ、という恐ろしく限定された売り方で登場しました。こんないい作品がメジャーで流通しないというのは何という悲しいことか。いくら音楽産業が不況だとはいえ、さすがにそれはないでしょう、という扱い。勿論、ご本人がそれを望んだのかもしれませんが。

そんなマイナーな扱いに反して内容は恐ろしく高度で、捨て曲なし。本人も納得の出来、という名盤が誕生しました。元々個性が強い人なので、アレンジに凝ってしまうとアクが強くなってしまうところを、今の仕様でナチュラルに仕上げています。バックを固めるのは先日聴いたキリンジ青山陽一の作品でもお馴染みの千ヶ崎学や楠均といった面々。青山陽一もシングル曲ではギターを披露していて、その作曲はキリンジ兄の堀込高樹、ということでゲストも多彩。配信限定のシングルが出ていた頃から「次は凄いな」と予感していましたが、さりげなくクールで程よく凝った仕上がりの名曲群満載のアルバムとして今回目出たく結実しました。

そのシングル曲『夏のトレモロ』から『パイ包みのシチュー』、更にこちらも配信限定だったシングル曲『jav jav ~レインブーツでおいで』、以上3曲の畳み掛けるような展開が後半に配置されていて、こいつは堪らない。前半から中盤の静かな佇まいも聴き逃せないですが、後半の展開はかなり引き込まれます。全体として抑えたトーンなので一見地味ですが、皮を一枚めくると才能が爆発しているようなアルバムです。