高橋幸宏『One Fine Night』disc 2

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やっと観終わりました。長い!

後半はビートニクスから始まりますが、鈴木慶一の「black pupa」というのが言い得て妙。ここ最近の高橋幸宏はやはりバンドに拘っているように思います。この理由は意外なところで気付かされました。

ボーナストラックで90年代以降のPVが入っているんですが、前半の映像では楽しそうな当時の若者の映像と圧倒的な対比をなして高橋幸宏の目が虚ろなんですね。当時体調もよくなかったという話ですので、社会を見る目が覚めていたんだと思います。このギャップに恐怖すら覚える。40代というのは辛い時期なんです。誰だって。

それに比べてスカパラとの共演曲では笑顔も出て、目に生気が戻っている。やはり仲間と一緒にいることは高橋幸宏にとってもパワーをもらえることだったんだろうと推測します。何より楽しい。この仲間との関係が徐々に高橋幸宏を復活させていったのではないか。YMOの再結成もその延長線上に位置付けられると思います。そこが自然とそうなっていった。でもそれは高橋幸宏の意志をもった活動形態でもあって、それがワールド・ハピネスのキュレーターにも繋がっている。人と人を結びつけるのが嬉しいんじゃないでしょうか。

演奏の方はやはり後半のベテランメンバーのパートが良くて、『Glass』『Something In The Air』『今日の空』といった楽曲には普遍的な魅力が宿っています。『今日の空』には珍しく妻も反応していました。「声が優しい」とのこと。聴きやすさも手伝って多くの人を魅了するんですね。

ラストの『Sunset』『Saravah!』は今回のコンサートのコンセプトを凝縮した高橋幸宏の想いが詰まった渋い演奏で、とてもしっとりと聴かせます。こうして全体を俯瞰してみると、高橋幸宏は最初から今に至るまでAOR的なメロディの人だったんだなあ、と痛感させられます。テクノではないんですね、本質は。そして更にバンドマンでもある。恐らく個人主義的な方なんだとは思いますが、人との関わりで自分を駆動させることを知っているから、あえて人と関わっていく。そしてそれが決して嫌いな訳でもないんだろう。そんなことを考えました。