テイ・トウワ『LUCKY』

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「浮世離れ」。

テイ・トウワの新作が出ました。インタビュー記事やラジオ番組で雰囲気は伝わってきていましたが、ほぼ想像通りの内容。テイ・トウワは震災やビートルズ・リマスターを挟んでもほとんどスタンスが変わらない。音圧は大きいし、アッパーなノリは変わらずに継続しています。これが今の自分の耳には浮世離れした音楽に聴こえてしまう。発言なんかも多少なりとも軽さが目につくような気がするんですね。

「大ベテランかド素人しか使わない」と明言していますが、その大ベテランの方はなかなかに聴かせるものがあります。椎名林檎が参加した『APPLE』が一番好きかな。bpmが遅い方がうねりが出てかっこいい。細野晴臣がギターで、坂本龍一がボーカルで参加した『GENIUS』もしっとりとして良い出来です。

一方、これまで通り、あるいはそれ以上のアッパーな曲群は何故か耳を通り過ぎていってしまう。これは何故なんでしょう。今を、あるいはこれから先を予見するようなものであれば、そこには静けさがあるはず。あるいは哀しみがあるはず。それが見当たらない気がするんです。一度深い穴の底に落ちてそこから這い上がって来る過程が必要なのではないか。ただ単にきらびやかなだけではこれからの時代を乗り切っていけないような気がします。決して悪くはないし、いい曲もあるので、「半分惜しい」といった感覚です。