これはいい!カーネーションの直枝政広とワールド・スタンダードの鈴木惣一郎が組んだユニットのアルバム。想像以上に良かった。
『とんかつの唄』では細野晴臣と鈴木慶一をゲストボーカルに招いていますが、何といっても二人の倍音がよく出たボーカルは抜群です。バックに鳴る音は昭和風の懐かしさを誘う音でもあり、かつきっちり現在の音でもある。
この「音」が不思議な個性を出している。アコースティック・ギターが中心なんですが、暖かい音でもあり、切れ味が鋭い音でもある。シンプルながら妙に音が大きいんですね。かつ少しくぐもっているような気もします。迫力のあるシンプルさ、とでもいいましょうか。
カーネーションの音が好きな方は一連の楽曲がすんなり耳に入ってくると思いますが、どうもそれだけではない。鈴木惣一郎があらかじめきっちりと決め込んだ枠組みの範囲内で直枝政広の歌が響くと、ある種こじんまりとした、かつ一種の制約の中での振れ幅が心地良いバランスで迫ってくる。この枠を出ない感じが逆にポップスとしては絶妙のバランスで、聴きやすくていいんですね。無駄な突出のない渋み満載の、かつ元気なポップ・アルバム、そんな風にも聴こえます。これは何度も聴きたくなるかな。