スティーヴ・ジャンセン『Slope』

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JAPANの暗さを久々に味わいました。

ティーヴ・ジャンセンの今のところ唯一のソロアルバム。リリースが07年ですから既に7年前になります。大分暗いとの話だったのでしばらく避けていましたが、とはいえリズム隊。それなりの躍動感はあるだろうということと、ここしばらくの高橋幸宏による評価を信頼して手にとってみることにしました。

以前ラジオで「この兄弟は何で二人ともこう暗いんでしょうか」といった内容の発言を高橋幸宏がしていましたが、確かに暗い。ただ少しお兄さんとは暗さの方向が違います。5年間かけて大分練り上げて作った作品とのことですが、やはり全体にリズムの構築がなされている。ビートがあるとないとでは響いてくる印象が違います。最近のデヴィッド・シルヴィアンがかなり現代音楽風に孤高の存在化しているのに比べて、弟とやっているナイン・ホーシズなんかは比較的まだポップ・ミュージックのフィールドに留まっている。それはやはりスティーヴの存在が大きいのだろうと実感しました。

確かに独特の暗さはあるし環境音も電子音もダウナーな方向で使われているんですが、端的に美しいし浮き世離れはしていない。まだ楽曲として成り立っています。お兄さんはそこにも留まっていないですから。芸術性と世の中を繋ぐブリッジのような役割に結果的に弟の方はなっているんですね。とはいえ寡作。

この人も誰か別の人と関わることで真価を発揮していく方なんだと思います。同じデヴィッド・シルヴィアンをゲスト・ボーカルに招いていてもミック・カーンとは微妙に違った個性を出している。アクが少ない分ストイックに聴こえてきて、これもまたJAPANであった、ということなのでしょう。JAPANをポップスにギリギリ留まらせていたのはスティーヴの力量による側面も大きい。そこがYMOにおける高橋幸宏の立ち位置にきっと近いんだろうと思います。