ジョージ・ハリスン『The Apple Years 1968-1975』『不思議の壁』

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ジョージ・ハリスンはEveryday Musicで特集されて以降、どこかできちんと聴き直さねばと思っていました。そこへタイミングよく飛び込んで来たアップル時代のタイトルのボックス化のニュース。少し躊躇しましたが、HMVのポイントが使えたので思い切って注文。何故にこんなにジョージ・ハリスンが多くのミュージシャンやアーティストに支持を受けるのか、考えてみるいいチャンスだと思います。

本作はアップル・レーベルからの第1弾で、ほとんどがインド音楽による習作的なサントラ盤です。聴きどころは余りありませんが、唯一ボーナストラックで入っている『The Inner Light』のインストバージョンが秀逸でした。聴き馴染みがあるからかもしれませんが、この曲を聴くと、いかにビートルズナンバーがポップスとしての成立性で際立っているか、逆に本作に収録されている楽曲がいかに素材然としているかが分かります。東洋と西洋の融合を試みたそうですが、その成果はビートルズとして提示したインド系楽曲の方で充分示されていて、他はそこまでのプロセスに過ぎない。

ジョージ・ハリスンの魅力を語る人が妙に裏方チックなところも気になります。ギター担当なのに天才二人の影に隠れて頭角を現すのが大分遅れている。むしろその社会性に皆反応しているのではないか。前面に出ることは当人にとっては辛いことですが、周囲から見るとどうしても羨望の的となり、嫉妬も生まれます。むしろ後から出てくる人の方が好感をもって迎えられ、成功を皆が祝う。これ、人間性も関係するんですよね。最初に前面に立つと尖らざるを得ないですが、その背後で身を潜めている人は謙虚さも身に付くし、捻くれてもくる。で、最終的にはバランスがとれた身の振り方が出来て、脚光を浴びた際に祝福される訳です。この辺が魅力なんじゃないかなあ。日本でいえば鈴木茂ですね。

ということで、この後じっくりとアップル・イヤーズを堪能していきたいと思います。