YMO『FAKER HOLIC』

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ここまで来てまだ70年代。

初の海外単独ツアーに出たYMOの記録がこの2枚組となりますが、演奏はとてもタイト。特にやっぱりドラムですね。「在広東少年」のリズムの早いこと。全体的には『パブリック・プレッシャー』のギター差し替え事件の元音源でもあり、こちらではちゃんと渡辺香津美の音が入っています。だからこそロックっぽく聴こえるのかもしれませんが、矢野顕子の存在感も凄い。バンドとしてのまとまりは完全にここで完成されていますね。

このボックスのおかげでまた元気になりました。そういう意味では非正規盤とはいえ商品化には感謝しなければいけない。初期音源の聴き返しも同時に行っていますが、左程古さを感じさせないのは時代の流れとライブ化、あるいはフェス化した聴取形態の変化によるところが大きいと思います。

YMOはドラムがいたからカッコ悪い、と発言したのは石野卓球だったかな。確かにテクノとしてはそうでしょう。ライブ音源を聴く限り、ここにはテクノは存在しない。何といっても79年ですから。その肉感的な響きは当然高橋幸宏のドラムによることろも大きいですが、その後一貫してライブはドラムありきのものです。一部スケッチ・ショウのような形態もありましたが、基本は高橋幸宏がドラムセットに座ると盛り上がる。クリック音に合わせて叩いているからリズムは正確ですが、全体の質感はクールというより汗臭い。それでも当時は無機的等と揶揄されたんですから時代は変わるものです。

細野晴臣YMOを構想する際にクラフトワークのようなグループを生み出すドイツのような歴史は日本にはなかったため、紙のような軽薄な音楽でいいと考えた、というような発言をしていますが、そのルーツのなさが謎めいていて良かったんじゃないかと思います。