10cc『The Original Soundtrack』

f:id:tyunne:20181117084835j:plain

75年リリースの3rd。大作ですが、10ccとしてのバランスが保たれていたのはここまで。次作を最後にバンドは分裂してしまいます。この息の短さはまるではっぴいえんどのようですね。

代表曲の「I'm Not In Love」は異常な曲で、こんな前衛的なアレンジの曲がヒットしたのはビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」やビートルズの「Strawberry Fields Forever」くらいではないでしょうか。甘いメロディと前衛的なアレンジのどちらが欠けても成立し得なかった楽曲です。

組曲の「パリの夜」でいきなり大作感を醸し出してしまいますが、他の曲も絶妙なバランスで成り立っており、二つのソングライターチームが奇跡的に同居していた頃の幸せな時代を象徴するアルバムとなっています。

しかし、それがより自然だったのは2ndの『シート・ミュージック』だったと思うので、ここより少し前が実はピークではないかと感じます。ここでの究極は若干の息苦しさをもたらしている。結果的に分裂の兆しを見せ始めた緊張感が全体的に漂っているアルバムで、その構築感に引いてしまう人も多いのではないかと推察します。