10cc『10cc』

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10ccの73年リリース1st。どうしてもリードトラックの「Donna」の印象が強くて、ビートルズの「オー・ダーリン」の焼き直しのようなイメージで捉えてしまうんですが、よく聴くと各曲の構成はとても凝っていて、久しぶりに聴くとその魅力に魅せられてしまいます。

何といっても4人とも曲が書けて歌も歌えるというメンバーの奥行きの深さがバンドの特徴を表していて、普通に聴いていると聴き流してしまうようなリフの裏に不思議なギターの音や聴きやすさの後ろに隠れる構成の複雑さ等が見逃せません。この辺りが発展して後に組曲のような構成の楽曲に繋がっていく。その萌芽が見て取れる貴重な作品です。

ただ、その前衛性が前面化しておらず、まだ瑞々しさを感じさせる。そのあたりがつい耳を通り過ぎてしまう要因なのですが、どの曲も掘り甲斐があるものばかりで、結構侮れないな、と久々に聴いて感じました。次作の『シート・ミュージック』も傑作ですので、その前哨戦としても楽しめる、とても「美味しい」作品だと思います。