小坂忠『Connected』

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旧譜の再発でまた周辺が賑やかになりつつある小坂忠のこちらは09年リリース作。高橋幸宏小原礼佐橋佳幸Dr.kyOnといった気心の知れたメンバーと作り上げた作品です。

 

09年には小坂忠の過去作品をボックスにしたセットも発売されていて、密かに周辺が盛り上がっていた年でしたが、実は翌年に『HORO2010』がリリースされていて、そちらの方が話題性としては高かった印象があります。そしてその後大病を患い、復活して『HORO』全曲演奏のコンサートや、国際フォーラムでのトリビュート的な公演といったイベントがここ最近では開催されている。結果的にこの作品はそこへの過渡期のように見えてしまうきらいがあります。

 

しかし、何より痛いのは本作での音が若干薄味だということ。楽曲はベテランの落ち着きがあっていいし、演奏も抜群なんですが、粘り気がやはり足りない気がするし、心に刺さってくるものが弱い気がします。悪くはないんですが、ちょっと物足りない。

 

小坂忠という人は何となく親戚の叔父さんみたいな風情があって、ここへ行くといつでも笑顔で迎えてくれて、昔話に花が咲くような、落ち着いた空間に一発で引き込まれる。そんな「場」のようなものを提供できる方のような気がします。ですので、いつでも安心感があって、何となく側に寄り添っている。それだけで存在意義があるという不思議な立ち位置をキープしています。

 

ここでの参加メンバーとの様子も付属のDVDで確認できますが、善かれ悪しかれまるで部活のような楽しげな雰囲気。この場が一瞬で提供できるのが小坂忠という人の実は真骨頂なのではないか、と感じ始めています。