ロイ・ウッド&ウィザード『Main Street』

f:id:tyunne:20200919050208j:plain


萩原健太さんのブログで知ったロイ・ウッドのお蔵入り作品のリマスター再発。以前発掘されたCDはちょっと今となっては音が小さくて、内容がいいだけに多少不満でしたので、今回の再発はまさに願ったり叶ったりです。

 

しかし、この作品が元々ウィザードの『エディ&ザ・ファルコンズ』と2枚組で制作されるはずのものであったとは驚きでした。ウィザードはヒット・シングルも多い結構ポップなグループですが、背景に隠されたマニアックな趣向とグラム・ロック期に顕著な大仰な雰囲気、そして奇才ロイ・ウッドのビッグ・バンド志向によるブラスをふんだんに取り入れた複雑な楽曲構成が大きな魅力となっています。

 

そんな中でもこの作品は複雑な部分とポップな部分が見事にブレンドされていて、一聴するとやっぱり異形なんですが、耳に残るメロディの断片ととにかく一曲の中にこれでもかと多くの要素を詰め込んだ強烈な楽曲が並ぶ作品で、自分はとても好きなアルバムです。iPhoneでアーティスト・ブラウズでロイ・ウッド関連の一連の作品を聴き直した際にも、このアルバムのクオリティは群を抜いていました。「ああ、こんなに良かったんだっけ」といった感じ。

 

発売が見送られた時期はロイ・ウッドが2ndソロの『マスタード』を発売していた頃、すなわち75年前後とのことですので、当時の音作りもたっぷり味わえます。楽曲としてはシングル・カットされた「Indiana Rainbow」もいいですが、本編ラストの「I Should Have Known」がとにかく目まぐるしくて美しい。ボーナストラックで1曲「Human Cannonball」という曲が追加されていて今回初めて聴きましたが、ここへ来て更に蔵出しを追加して再発をまとめあげるなんて、にくいですね。