XTC『Drums And Wires』

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CD + Blurayによる再発第2弾は3rdの本作でした。鈴木慶一XTCの中で1作選ぶとしたら何かと聞かれて本作を挙げていたのを思い出します。ジャケットのロゴがエヴァンゲリオンに登場したり、「Scissor Man」という曲が『ハサミ男』という小説の原案になったりと、文化的にも後に影響を残した作品です。

次作が『ブラック・シー』ですので絶頂期一歩手前な訳ですが、この頃の初々しくて元気で勢いのある、かつ荒々しい演奏は確かに魅力的だし、加えて他バンドとは異なるインテリジェンスを既に萌芽させつつあるという不思議な作品です。バリー・アンドリュースの脱退とデイヴ・グレゴリーの参加によって、ギターサウンドに厚みが出てテクニカルにも複雑性が増した楽曲が並んでおり、聴き応えのあるアルバムとなっています。

で、例によってこのボリューム!主に5.1chミックスとデモ、リハーサル音源が中心ですが、それにしたって凄い曲数です。アルバム何枚分の音源が入っているのか最早分からない程沢山の曲が収録されていますが、バージョン違いやデモは別として初めて聴いた曲は意外と少なめ。「おっ」と思ったのはコリン作の「I Overheard」という曲です。また既にこの段階で「Don't Lose Your Temper」のデモがあったことにも驚きました。

聴き込んでいる回数が少ないからか、久々に聴いた「Wait Till Your Boat Goes Down」も新鮮に聴こえました。これ、確かシングルのみのリリースでしたよね。本編ではアンディ・パートリッジの引きつったようなパンキッシュな歌い方がまだ若さを感じさせる反面、コリン・ムールディングのポップな側面がフィーチャーされた形となっており、「Making Plans For Nigel」はXTCブレイクのきっかけになった曲となっています。

全部聴き切るのにかなりの時間を要す上に5.1chまであるんだからもう堪りません。いずれ環境が整ったら(といっても10年後くらいになりそうですが・・)サラウンドのミックスも堪能したいと思います。