ムーンライダーズ『It's the moooonriders』


ムーンライダーズの11年ぶりの新作がリリースされました。まずはめでたい。

 

タイトルはスカートの澤部渡の提案だそうで、『最後の晩餐』で冒頭にXTCのアンディ・パートリッジがメンバー紹介をしている音声が「It's the moooonriders!」と聴こえることから発想したものだそうです。「o」が2つ多いのはその澤部渡佐藤優介の二人が最近のライブには欠かせないサポートメンバーになっているから、という理由です。全部理由がある。

 

ということで早速聴いてみましたが、これは難解なアルバムですね。ハードルが高い。真っ先に想起したのは86年の『DON'T TRUST OVER THIRTY』でした。音が塊で迫ってくる。86年当時にその作品を初めて聴いた際の迫ってくる音塊にとてもびっくりして、一度聴いただけでは理解できなかったことを思い出します。そして何度か聴いているうちに、彼方からメロディが立ち上がってくる。そんな感覚を抱きました。ジャケットの写真も『DON'T TRUST OVER THIRTY』の裏ジャケットと酷似している。これは偶然ではないのでは。

 

ライブで事前に聴いていた「岸辺のダンス」や「駄々こね桜、覚醒」といった曲も、この作品での音は非常に構築された音になっている。まるで別の曲のように聴こえました。これは繰り返し聴かないと分からないぞ。

 

11年前の『Ciao !』にあったエスニック的な要素も見え隠れしてはいますが、あのアルバムにあった、どこか抜けの良い感じというのは本作にはありません。もっとシリアスな気がします。混沌という意味では『ムーンライダーズの夜』や『Dire Morons TRIBUNE』に例えることもできそうですが、それとも少し違います。もうちょっと作り込まれているような気がするんですね。

 

とにかくこちらに選択を迫ってくるような迫力がありますので、聴く方も覚悟が必要です。でもこれはムーンライダーズにまたリスナーが試されている。何度も聴き込むことで見えてくる風景がある。そんな深みのあるアルバムだと理解しました。