高橋幸宏『EGO』


高橋幸宏さんが亡くなって早くも1年近くが経とうとしていますが、一連のEMI作品が砂原良徳のリマスターで毎月再発されていくことになりました。EMI時代の作品を聴き直すことに対しては今回も大分迷いましたが、昨年の松武秀樹のラジオ番組で特集されて背中を押されてしまいました。

 

88年リリースの本作はご本人の体調も最悪で1年間の苦闘の上に何とかリリースされたという作品でしたが、リリース当時は自分の耳が高橋幸宏から離れていたので手に取ることはありませんでした。EMI作品はそのような向き合い方しかできていないものばかりです。

 

だいぶ歳をとってから心痛3部作に惹かれて手に取ったEMI時代の一連の作品の中で本作にはやはりちょっと気がひけるところがありました。大きな原因は1曲目のビートルズ・カバー「Tomorrow Never Knows」と3曲目の「Erotic」にあって、この2曲が何となく自分の耳を遠ざけていた。

 

しかしながら、その後も歌い継がれる鈴木慶一との共作「Left Bank」も収録されているし、細野晴臣作曲の「Sea Change」も収録されている。何よりこうして聴いていて音に迫力があるし、決して悪いアルバムではない。会社の人の車でこの作品がかかっていて驚いたことがありますが、やはり本作は渋い。表面的な印象に引っ張られてはいけません。

 

今回こそはきちんとEMI作品に向き合ってみようと思わせる充実した内容となっています。