『16 SONGS OF HIROBUMI SUZUKI - DON'T TRUST OVER 70 -』


鈴木博文の古希を祝って企画されたトリビュート盤がリリースされました。これは素晴らしい企画ですね。

 

ムーンライダーズは楽曲ではなく手法が残っていくバンドだといわれていましたが、実際のところ鈴木慶一に対するカウンターとして鈴木博文の存在があって、その存在は詩人であり、かつ実は楽曲重視であるということがこのトリビュート盤からは浮き上がってきます。端的にいい曲が多い。

 

冒頭からあがた森魚の「大寒町」、続くのはポータブル・ロックの「工場と微笑」ということで、この時点で既に卒倒もののラインアップなんですが、やはり白眉はカーネーショングランドファーザーズでしょう。それぞれ「ウルフはウルフ」「Kucha-Kucha」をカバーしていますが、この解釈の高度さは他の追随を許さない。愛情溢れてしかも自分達の楽曲として消化している。トリビュートのお手本のような楽曲です。

 

こうして後続のミュージシャンに支持される鈴木博文という人は、控えめながらとても優しい方なんだと思います。その人柄が伝わってくるような、温かいトリビュート盤でした。同年代のミュージシャンが次々と鬼籍に入るなかで、少しでも長く活動を続けてほしいと心から願っています。