大貫妙子『SUNSHOWER』


77年リリースのこの2ndは、2017年に放送されたテレビ番組「YOUは何しに日本へ」でアメリカ人がこの『SUNSHOWER』のアナログ盤を探しに日本へ来たエピソードで人気に拍車がかかったように思います。

 

折りしも、YouTubeで初期の山下達郎吉田美奈子大貫妙子の作品が海外で人気となり始めて、日本でもシティポップの名でブームとなっていった時期。その象徴のように扱われ出したのがこのアルバムだと思います。内容よりも評判、かつ海外の支持が逆輸入される黒船効果でグングンとその商品価値は上がっていった。しかしながら果たして内容はどうなのか、というと勿論素晴らしいものになっています。但し注意が必要です。

 

以前から感じていて、今回聴き直しても感じたのは、アナログでいうA面、前半の楽曲の突出度合いが大きい、ということです。今でも歌われている必殺の名曲「都会」はやはり何度聴いてもグッと来ますし、細野晴臣も大好きだとコメントしている「くすりをたくさん」なんかもグルーヴがあって素晴らしいと思います。楽曲の良さとアレンジの勢いが絶妙に絡み合っています。

 

本作は全面的に坂本龍一がアレンジを担当しており、ドラムにはSTUFFのクリス・パーカーを招いて、かつ当時のティン・パン・アレー系のミュージシャンが多く参加した作品となっています。そのため演奏は極上です。その演奏力がB面ではボーカルを追い抜いてしまっていて、演奏のための楽曲のように聴こえてしまう瞬間があります。そのため後半は若干敷居が高い。

 

先週聴き直した1stの『Grey Skies』はその後も毎日のように聴いていましたが、それはやはり楽曲の魅力が大きいからだと思っています。翻って本作はどうか、というと、もっと良くなっている部分と演奏に押されてしまっている部分とが同居しているように感じます。

 

それでもA面の魅力は圧倒的ですし、B面の演奏力も素晴らしいので本作はやはり良い作品だと思います。ただ、大貫妙子の作品のピークは、かつては80年代のヨーロッパ三部作と言われていたので、今のシティポップのブームがそれを追い越しているのも実情かと思います。

 

などと言いつつ、いいものはいいので、波に乗って聴くのも聴き方のひとつですから、余り色々考えずに聴いていけばいいようにも思います。