大貫妙子『Grey Skies』


今年になってまた大貫妙子さんのラジオ番組「The Univers」が復活したこともあって、大貫さんの声を毎週聴くことができるようになりました。ご自身の曲も沢山かかるので、色々と思い返すこともあり、久しぶりに初期作品を聴き返してみることにしました。

 

76年にリリースされた1stアルバムは久しぶりに聴きましたが、「こんなに良い曲が多かったか」と改めて驚いています。素晴らしい作品集ですね。シュガーベイブ解散から半年しか経っていない、ということもありますが、「愛は幻」などのバンド時代の楽曲も収録されています。

 

当時は山下達郎坂本龍一大貫妙子の3人でいつも一緒にいた、という話もありますので、このアルバムはざっくり言うとA面が山下達郎サイド、B面が坂本龍一サイド、といった構成になっています。シュガーベイブからのつながりが前半で、その後のソロ活動の兆しが後半、といった感じでしょうか。

 

とにかく良い曲が多くて、聴いていて豊かな気分になるんですが、1stならではの無垢な魅力と同時に洗練度も抜群に高い。同じ時期に出てきた荒井由美吉田美奈子と比べても突き抜け方が違うのは恐らくソロデビューの前にシュガーベイブでの活動があったからではないかと思います。協力してくれる仲間が最初から多くて恵まれていた。その結果が楽曲のクオリティに反映されています。

 

冒頭の「時の始まり」はしばらく前の始発電車を扱ったテレビ番組のテーマソングに使われていたことを思い出しました。「約束」も「午后の休息」も「愛は幻」もみんないい曲ですね。「街」は最近のライブでも歌われています。

 

「ONE'S LOVE」で細野晴臣、「WHEN I MET THE GREY SKY」で矢野誠がアレンジで登場して脇をガッチリ支えています。この辺りは余裕の仕事ぶりでそれぞれ独自の魅力を称えていますが、やはり山下達郎坂本龍一の青春真っ只中のアレンジが勢いがあって好きです。しかも既に完成形の趣がある。最初から凄かった。

 

でも一番は曲がいいこと。初期ジョニ・ミッチェルというよりはジェームス・テイラーの一連のアルバムのような爽やかな後味を残す、エバーグリーンなアルバムだと思います。