大貫妙子『ルーシー』


97年リリースの坂本龍一プロデュース作品。大貫妙子の一連の作品を先日聴き返しましたが、本作をそういえば持っていなかったことに気付いて遅ればせながら入手しました。とても見事な作品に仕上がっています。

 

坂本龍一とのタッグは12年ぶり、ということですので、『コパン』から本作までのインターバルがあった、ということになります。その間に、坂本龍一は『スウィート・リヴェンジ』や『スムーチー』でポップ・ミュージックの王道に挑んで挫折して、その後96年には『1996』、98年には『BTTB』という自らのルーツであるピアノ音楽に回帰していくことになる。本作はその狭間に位置する作品となっています。

 

収録曲の「Happy-go-Lucky」や「Volcano」「Mon doux Soleil」といった楽曲は今でも歌い継がれていますが、オリジナルの方では坂本龍一の抑制されたアレンジで丹精に作り上げられていて、聴いていてもクールに響いてきます。弾けたり荘厳になり過ぎたりすることがない、冷静な音作り。これは少し意外でしたが、いい意味で裏切られました。

 

中盤に登場するブラジル音楽のアレンジはアート・リンゼイで、この辺りも坂本人脈で固められています。アート・リンゼイは最近もコーネリアスと一緒に作品作りを行っているので、再び脚光を浴びつつある流れになっていますが、ブラジル音楽については少しずつ聴き進めていきたいと思っています。

 

ここから坂本龍一との共作である『UTAU』まで13年もインターバルがあって、折に触れて邂逅するお二人の作品は10年に一度の出来事として刻まれていくことになっていきます。坂本龍一は今後も大貫妙子の活動を、フジロック大貫妙子のステージに現れたトンボのように、姿を変えて見守っていかれることでしょう。