大貫妙子『ミニヨン』


78年リリースの3rd。このアルバムはレコード会社の移籍に伴い、外部にプロデューサーを立てたことで、初めてご本人がビジネスと対峙した作品となっています。曲や歌詞に変更を要求され、従った結果がセールス不振だった、ということでその後の作品までの2年のインターバルを産んでしまう訳ですが、前作『SUNSHOWER』との流れの中での変化点と継続点を見ていくと浮かび上がってくるものがあります。

 

大雑把にいうとA面が分かりやすい整理された内容になっていて、ここにビジネス、というより歌謡界を感じる。『SUNSHOWER』や『Grey Skies』にあったプレーヤー志向の勢いのある音楽が、ここではすっきりと整理されてパッケージ化されています。その後も歌い継がれる「横顔」のような曲もあって決して悪くはないんですが、流れで聴いていくと「あれっ」と思うところがあります。A面が名刺がわりのようなところもあるので、ここでの印象はやはり良くなかったのではないでしょうか。個性が押し込められてしまっている。

 

代わってB面では前作に引き続き坂本龍一のアレンジによる楽曲が大半を占めています。ここがポイントで、『SUNSHOWER』から引き継いだかのような「言いだせなくて」「4:00AM」といった楽曲での抑えきれないプレイヤーシップ、そして今でも歌い継がれる「突然の贈りもの」「海と少年」での美しいアレンジ。このアルバムの肝は後半にあります。ここを目立たせなかったのがきっといけなかったんでしょう。

 

楽曲の粒立ちはとても良くて、決して悪いアルバムではないと思います。それが証拠に、後になって様々なアーティストにカバーされたりすることで収録楽曲が頭角を表していった。ビジネスの分岐点に立たされた不幸な記憶とは別に、楽曲は残っていく。そして後半に隠された音楽的魅力、といった色々な味わい方ができる作品だと思います。