トッド・ラングレン『Todd』

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トッド・ラングレンの混沌を味わうには前作の『A Wizard, A True Star』が一番だとは思いますが、それがバランスよく爆発しているのは本作の方が一枚上です。自信に満ちた活動絶頂期の振れ幅の大きい2枚組大作が74年リリースのこの作品です。

とにかくいい曲が多いですが、極めつけは「A Dream Goes On Forever」です。この短い小品に詰められた美しい要素はトッドの活動全てを凝縮しているかのような名曲で、何度聴いても鳥肌が立ちます。リズムボックスのチープな響きさえも愛おしい。

その他にも「The Last Ride」や「Don't You Ever Learn」等、このアルバムで登場した曲は気品と慈愛に満ちあふれていて、楽曲自体の魅力と共に飽きさせない永続性を有しています。LPではC面での一連の流れも素晴らしくて「Useless Begging」から「Heavy Metal Kids」までの流れは聴いていてワクワクします。ラストの「Sons of 1984」ではカラオケで観客にコーラスを歌わせてそこに自らのボーカルを被せるという大技を繰り出します。

トッド・ラングレンの魅力はその楽曲のメロディもさることながらハードとスウィートな側面を往復してひとつの作品に詰め込む混沌にあります。繰り返しになりますがそのバランスがボリュームと共に見事に成立しているのが本作なので、玄人筋からも支持されているのではないかと思います。賞味期限の長い名作です。