この時期のトッド・ラングレンはプログレ趣味に走り始めていました。同じ74年に出されたソロ『Todd』の方でもその兆しは見え始めていましたが、翌年の『Initiation』でも趣味は爆発している。そうした自分の趣味嗜好を実現するためにユートピアというバンドは結成されたといっても過言ではないでしょう。
初っ端はライブで始まり、LPでのB面すべてを「The Ikon」1曲で通してしまう。これは3分間ポップスの世界とは余りにかけ離れた行動で、こうした志向が一人のアーティストの中に同時に存在している、トッド・ラングレンという人はそういう人です。この分裂具合もひとつの魅力となっているので、ファンは黙ってついていくしかありません。
とはいえプログレを聴かない身にとっては本作のような趣向は若干退屈なのも事実です。トッドのことですから音の感触はポップに彩られていますので聴きやすさはありますし、本格派のプログレからすると軽さも目につくのかもしれませんが、ハードロックにせよ電子音楽にせよ多趣味が高じて展開されるこうした音楽の方向性はトッドの場合大抵軽めに表現されてしまう。その辺りが可愛いところなんですね。