ブルー・ミッチェル『Blue's Moods』

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今日からやっと年末年始のお休み。今年も色々ありましたが、比較的穏やかに新年を迎えられそうです。

 

このブルー・ミッチェルの60年録音作品は6年前にも会社の先輩から借りて聴きましたが、やっぱりこの人はこの作品に行き着く感じなんですね。ラジオ番組で紹介されるのもこのアルバムからのことが多くて、結局CDで手にしてしまいました。

 

6年前はきつい環境で聴いていたので、音楽はいいものの繰り返してその後聴き続けることができませんでしたが、やっぱり音の粒立ちがいいし、ウィントン・ケリーのピアノもやっぱりいい。

 

ビル・エヴァンスを聴き進めている関係でピアノ・トリオの作品が多くなりがちですが、やっぱり次はトランペットなんだろうなあ。何となくサックスの音が入ってこない。これは何故なんだろう。などと思いながら夜は明けていきます。

 

6曲目の「When I Fall In Love」はいいですね。余りバラードには引っかからないんですが、この分かりやすいメランコリーにはグッと来ます。

細野晴臣『Good Sport』

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95年にリリースされたこの作品も中古でずっと探していましたが、過去に一度だけ見かけただけで、その時スルーしてしまって以来、見つけることはできませんでした。

 

細野晴臣のラジオ番組でゲストに来た水原希子が本作収録の「トロイ」を選曲していてとても良かったのでずっと気になっていたんですが、今回配信で無事聴けた次第。

 

丁度93年にYMOが一時的に復活して『テクノドン』をリリースした後なので、その「トロイ」という曲では『テクノドン』収録曲の音、「ポケットが虹でいっぱい」でバックに鳴っている金属音や「I Tre Merli」での鼓のような音が随所に登場します。

 

内容的にはスポーツイベントのための楽曲集なので、ある意味映画音楽にも近い感触です。この頃の細野晴臣は様々なユニットや形式で大量の作品をリリースしていたので、なかなか活動をフォローするのも大変でしたし、まだアンビエントの海の中にいらっしゃったので一般人の耳を寄せ付けない雰囲気がありました。

 

そのため自分もミッシングリンクが多くなってしまったんですが、全部フォローしなくても良い。網羅することが目的ではないから、まずは聴いてみて判断する。その繰り返しだと最近は考えるようにしています。

細野晴臣『Music for Films 2020-2021』

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今回配信に手を伸ばしたきっかけがこの作品です。配信とアナログでのみのリリースでCDの発売が見送られましたので、ちょっと考えて配信の方へ舵を切りました。結果的に様々なボックスセットも聴けて正解だったんですが、やはりメディアの選択はコンテンツから始まるということを改めて実感しました。CDの時はXTCの再発がきっかけだったもんなあ。

 

冒頭は先日映画も鑑賞した『SAYONARA AMERICA』のテーマ曲「Sayonara America, Sayonara Nippon」。はっぴいえんどのセルフカバーですね。続いてひとつ前の映画の主題曲「No Smoking」が来ます。冒頭はこんな感じで快調に飛ばしていきます。

 

後半は比較的静かな曲が多くて、聴いているとノマド・レーベルの頃を思い出します。思えば『銀河鉄道の夜』のサントラもこんな感じでしたし、『コインシデンタル・ミュージック』の頃もこんな感じでした。自動筆記で楽曲を制作していた時期ですね。映画音楽の制作は似たような面があるのかもしれません。映画がありCMがある、ということはクライアントのオーダーがあるということなので、必然的にテイストが似てきてしまうのか。ご自分のドキュメンタリーは別でしょうが。

 

ここから何を読み取るか。読み取るべきなのかどうかも分かりませんが、とりあえず言えるのは音が静かであり、かつブギウギではない内省的な音が鳴っている比率が高い、ということ。先ほど触れた80年代中盤の環境音楽の時期と、同時に再発されるスウィング・スローにも顕著なアンビエント直後の音の質感、そして現在の音を置きに行くような丁寧で静かな音楽。これは何かひとつの狂騒が終わった後の感覚に近いものがあるような気がします。コロナの時期が続いて少し出口が見えたようでまだ見えない。それは時代が変わったということで、ご本人のモードも変わって来ている。もしかしたらその辺りが共通点なのかもしれませんね。

シャイ・ライツ『Give It Away』

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今年から始まった田島貴男のラジオ番組をその後も毎週欠かさず聴いていますが、以前特集のあったシャイ・ライツの作品は、まずは中心人物のユージン・レコードのソロ作品を手にして、次にこの69年リリースの1stを入手しました。

 

スウィート・ソウルについては定期的に山下達郎もラジオ番組で特集を組んでくれるので非常に参考になるんですが、自分はまだデルフォニックスもスタイリスティックスも聴けていませんので、これから追々チェックしていこうと思います。

 

このシャイ・ライツも網羅的に聴いていこうと心に決めたグループですが、とりあえず1stから元気があって良いですね。田島貴男も言っていましたが、やはりソングライターをメンバーに抱えているのが大きい。

 

そしてアイズレー・ブラザーズと同様、長期間に渡ってクオリティの高い作品を作り続けたところが素晴らしい、ということです。ジャズと共にソウルについても少しずつですが聴く範囲を広げつつある今日この頃です。

 

週末は買い込んであったCDをひとつひとつ聴き進めていますが、配信とパッケージメディアの関係性については、インターネットが普及し始めた頃にウェブが全てでいずれ本は必要なくなる、といった論調に似ているところがあると感じています。

 

その後も本は規模こそ縮小しているものの無くなっていないし、作品にきちんと時間を割いて向き合うことの重要性は失われていない。ただ、人間は文字を読む量はウェブのお陰で増えた。これが音楽配信とCDの関係にも適用できるんじゃないかと思います。人間は音楽を聴く量は増えたが、作品に向き合うメディアは無くならない。それが一部CDからレコードへ移行しているだけの話ではないかと。そんな風に今は感じています。

ビル・エヴァンス『Time Remembered』

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今年は本当にジャズをよく聴いた年でした。大きくはラジオ番組のお陰ですが、そんな中でこのビル・エヴァンスと出会えたことが本当に大きい。ジャズといえばマイルスしか知りませんでしたので、昨年ぐらいからじわじわと聴いていったビル・エヴァンスの音楽は、自分の時間を豊かにしてくれました。

 

まだまだ作品は聴ききれていないですが、今まで聴いてきた中でも『At Shelly's Manne Hall』は好きな作品で、本作はそのアウトテイクの発掘盤となります。元の『At Shelly's Manne Hall』とセットにした同名作品の方がメジャーなようですが、日本ではあえて発掘音源のみを集めてリリースされているようです。今回聴いているのはそちらの方です。

 

やっぱりチャック・イスラエルの時期の作品も自分は結構好きですね。一番最初に聴いたのが『How My Heart Sings』だからかもしれませんが、後追いで聴いたスコット・ラファロとの鬼気迫る演奏よりもリラックスしていて好きです。演奏の構成も時期的にいいのかもしれません。

 

年の瀬になって配信という手段を手に入れたので聴く量が増えていきましたが、じっくり向き合う形で今後もビル・エヴァンスについては付き合っていきたいと思います。物理的にフィジカルでの収集はそろそろ困難になりつつあるので配信によっていくかもしれませんが・・。

ムーンライダーズ『LIVE 2020 NAKANO SUNPLAZA』disc 2

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2枚目。後半の方が比較的定番曲の割合が高くなってきます。

 

もっともっと定番の「スカーレットの誓い」や「トンピクレンっ子」「くれない埠頭」といった曲は演奏されていないので完全ド定番という訳ではないですが、それでも活動休止前によく演奏されていた曲が多い。でも「スカンピン」は少し意表をつかれました。やっぱり格別ですね。

 

その中でも一番意外だったのはラストの「はい!はい!はい!はい!」で、ここでのキーポイントは『最後の晩餐』だったのではないかと。前半に「ガラスの虹」もありましたし。そして今年の45周年ライブでは『アマチュア・アカデミー』がキーポイントだったんだと思います。

 

2011年に活動休止となった際にはもうムーンライダーズのステージは観れないと思っていました。それが断続的な復活を経てこうしてコンスタントな活動を継続してくれている。これはもう音楽というよりミュージシャンが生きることそのものなんだと考えた方がいい。歌って演奏して制作せざるを得ない、性分として。それを我々は観ている。一緒に時代を刻んでいるんだと思います。

ムーンライダーズ『LIVE 2020 NAKANO SUNPLAZA』disc 1

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ムーンライダーズの2020年ライブも配信リリースされました。CDやブルーレイが高くてちょっと手が出なかったのでこれは嬉しいリリースです。配信様様ですね。

 

2020年の中野サンプラザでのライブは配信でも観ましたし、その後のWOWOWでの放送も楽しみました。従って充分鑑賞できているんですが、やはりそこでの岡田徹さんのご様子が当時から気になっていました。スタッフの介助で少し歩くのも覚束ないご様子でしたので「もしや」と思っていたんですが、案の定その後転倒されて入院してしまった。しかし今年のライブの前日に退院されて復帰。結果、感動的なステージとなった訳です。

 

かしぶちさんの時にも思いましたし、昨今の高橋幸宏さんや坂本龍一さんのご病気の際にも感じましたが、改めて年齢的にそろそろきつい時期に差し掛かっている。だからこそ、カウントダウンで制作に燃える、という側面もありますが、やっぱり親戚を失うようで悲しくて怖いですね。

 

ムーンライダーズのこの2020年のライブは部分的には「ガラスの虹」や「卒業」といった渋い選曲はあるものの、基本的には復活ライブなので定番曲中心。そのため、選曲による驚きは今年の45周年ライブの方が一枚上手です。更にこの後行われるクリスマスのライブがどのような形になるのか、また新作はどうなるんだろう、などと考えることができる幸せ。これがなかった。

 

ですので本当に復活は嬉しいし、信じられない。これを普通だと思ってはいけません。非常に特殊なことなんだ。崇拝するのは性に合いませんが、やっぱり感謝するべきなんだと思います。