トッド・ラングレン『ARENA』

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師匠の4年ぶり新譜。言われていたように「70年代のアリーナ・ロック」というキーワードで、以前はアルバムに1曲は収録されていたハード・ロック系のテイストがほとんどの曲に施されたアルバムだ。

注意深く聴くと『Courage』のようなメロウな旋律を持った曲や『Weakness』『Bardo』のようなスローバラード路線もあるが、基本はギターがガーンと鳴る曲調。

04年の『ライアーズ』との間にはリック・オケイセックの代わりにカーズ復活のメインボーカルを務めたNew Cars なんてのもあり、そこでは元気なロックを奏でていたし、ここ最近の活動はビートルズのカバーバンドなんかもやっていたようだから、この傾向は予想できなくもなかった。でも基本的にはまたアルバムをリリースしてくれる気になったこと自体に感謝しなければならない。来日もしたしね。

UTOPIAの中後期のような音を予想していたが、それよりもソリッドな印象。ただ何故に今?という疑問は払拭できないし、ジャケットも相変わらず謎だ。そもそも日本発売がなさそう、という時点で悲しい。マシュー・スウィートの時も書いたが、レコード会社は洋楽のプロモーションには慎重にならざるを得ないんだろう。ここまでCDが売れないと。

確かにこれがトッド・ラングレンの真骨頂とは言えないが、おじいさんが元気にやっているという事実だけで涙が出るというもの。以前に鈴木さえ子が「トッド・ラングレンにはアルバムに必ず捨て曲が1曲はある」と言っていたが、今回はその捨て曲を集めたようなもんだ。要するにトッドのファンはメロウな路線を常に渇望しているのであり、そこに応えないところがこの人のひねくれたところなんだと思う。