大滝詠一『ナイアガラ・ムーン』

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75年リリースの隙のない名盤。僅か28分の収録時間に濃密な世界が広がっている。

ドクター・ジョンの『ガンボ』を連想するが、当時のキャラメル・ママ陣営が大挙参加した鳥肌モノの演奏がパッケージされていて、物凄い。細野晴臣のトロピカル路線とはまた別の極点に位置する独特の発展の仕方をしていて、よりストレートにセカンド・ラインを実践している感がある。『福生ストラット(パート2)』はウルフルズもカバーしていたが、オリジナルの混沌具合はどうだ。全体的にボーカルが聴きにくいのもポイントだが、リズムに委ねる意味では楽器の一部としてスキャットのように声を鳴らしているのがいい。『ハンド・クラッピング・ルンバ』はティン・パンでも再演してたな。『シャックリママさん』は鈴木茂の『バンドワゴン』の別バージョンのようだ。『楽しい夜更し』も大好き。学生時代麻雀ばっかりしていたのを思い出す。

リマスターの音は相変わらず抑制気味でかつタイトだ。音の粒立ちは絶妙だし、聴いていて心地良いのは本盤も同じ。ああ、すぐ終わっちゃって勿体ない!そんな感じのいいアルバム。これは買い直しだが、単独で持っていて損のない必殺の一枚。以前のボーナストラックは強烈だったが、今回はストイックにオリジナルに忠実なのであっという間に終わってしまう快楽世界。